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丹波新聞 平成26年3月16日“やすらぎ”記事掲載

芦屋市に 「高浜虚子記念文学館」 がある。 虚子の孫にあたる俳句結社 「ホトトギス」 主宰 (当時) 稲畑汀子氏が、 2000年の春、 自宅の敷地続きに建てた。 先月、 帰省したとき、 風花の舞う中を訪ねた。 海辺に近い、 しょうしゃな高級住宅地の一角にあり、 庭先のろう梅がちょうど満開で、 数軒先まで香りを放っていた。
高浜虚子は明治七年、 愛媛県松山の生まれ。 同二十四年、 同郷の正岡子規と知り合い句作を始めた。 子規没後は小説なども書いたが、 「ホトトギス」 を支え、 俳壇でゆるがない地位を築いた。 その長男 「高浜年尾」 の娘が汀子氏で、 つい最近、 子息 「廣太郎」 氏が四代目主宰を継承したばかりだ。 そう大きな建物ではないが、 展示室には 「ほととぎす」 の初版本や子規、 虚子、 漱石の直筆原稿などもあり、 明治という時代の先達の偉業を感じさせられた。 中でも最も感動したのは虚子直筆の俳句の軸。 「白 (はく) 牡丹といふといへども紅ほのか」 の実に流麗な文字。 俳句の意味は 「白い牡丹といっても、 紅色がほのかにありますよ」というもの。白牡丹にあるほのかな紅色に気付いたことで一句になった。 そんなささいなことが何故おもしろいのかと言う人もある。しかし、俳句とは実にささいなことの発見で、 その本質を言い当てることが妙味なのだ。
虚子記念文学館から 「谷崎潤一郎記念館」 へ廻る。 彼は関東大震災の後、 関西に移り住んだ。 引越し魔のように関西を点々として、 芦屋にも住んだ。 関西の文化や暮らしに触れたことで名作「細雪」が生れた。 さすが芦屋市、 文化もゴージャスだ。

著者紹介

清水雅子(しみず・まさこ)
丹波市柏原町出身、岐阜県各務原市在住。1947年生まれ。俳句サークル「ひまわり」主宰。日本ペンクラブ会員。丹波新聞「やすらぎ」執筆を1979年より担当。家族との生活や四季のうつろいの中で感じたなどを、好奇心あふれる主婦の目線でしたため、長年来のファンも多いエッセイです。

以 上

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