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日本経済新聞 平成26年2月18日夕刊“あすへの話題”記事抜粋

教養教育の復権

静岡文化芸術大学学長  熊倉 功夫

 

今、いわゆる教養書が売れない。読みごたえがあって学術的にもすぐれた一般教養書の発行部数は、せいぜいのところ2000~3000部という。専門学術書とあまり変わらない。教養教育などというまどろっこしいものは不用だ、もっと実社会で役に立つ専門教育へ大学の軸足を移せ、と大学改革が進められてきた。高等教育における一般教養の衰退、教養部の廃止など教養教育の軽視の流れと、さきの教科書の不人気は表裏一体の現象である。

本当にそれでよかったのだろうか。

学生の就職先の現場からは「大学でやる専門教育などは、実際にはほとんど役に立たない。専門のことは自分たちが教えるから、それよりも基礎的な知識や問題の発見能力、解決法を考える力をつけてほしい」という声をしばしば聞く。「今の大学生は旧制の高等学校生より学力が低い。修士論文(大学院生が研究成果などを論文としてまとめたもの)でやっと昔の卒業論文(大学生が研究成果などを論文としてまとめたもの)だ」と。こうした現代の課題に応えるためには、教養教育を復権させる必要がある。

私が勤務する静岡文化芸術大学では、教養教育の重視を一つの柱とするカリキュラム改訂を進めている。昔の教養科目というと老教授が黄色くなったノートを読むようなイメージが強い。これからは教員が自分の研究の原点に立って問題意識を語りながら学問の基礎的な方法を語る専門教養ともいうべきものにしてゆきたい。それでこそ、教養の面白さが伝えられよう。

以 上

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